中国春秋時代における哲学者である老子。
(※中国春秋時代は紀元前770年~紀元前221年まで)
報酬の大部分を財団に寄付し、月1000ドル強で生活しているその質素な暮らしぶりから「世界で最も貧しい大統領」とも言われた第40代ウルグアイ大統領ホセ・ムヒカ。
(※ホセ・ムヒカ元大統領の就任期間は2010年3月1日より2015年2月末まで)
かたや、古代中国の哲人。かたや現代の中米の大統領。
時代も地域も似ても似つかない、一見共通性が感じられない二人の偉人ですが、その言葉・メッセージには共に、時代も地域も超越し『人間にとって大切なものとは何であるか』を深く考えさせられる内容が含まれています。
中国の思想家・老子の言葉「足るを知る」の本来の意味とは?
「足るを知る」
は、中国の思想家『老子』の有名な言葉です。
この「足るを知る」という言葉。
インターネット辞書の『goo国語辞書』や『コトバンク』で調べると次の意味で案内されます。
「身分相応に満足することを知る」
その一方、近年巷では、むしろ以下のような意味で用いられていることが多いかと思います。
「既に十分満足であることを知っている」
そのどちらの意味にシンパシーを感じるかは、人それぞれのところがあるかと思いますが、上述の2つの用法に共通しているのは、『老子』の言葉の前半部分のみを取り上げている点です。
そうなのです。実は、この「足るを知る」という言葉には、続きがあります。
その続きは以下です(続きを含めてこそ、『名言』となります)。
『足るを知る者は富み、強めて行なう者は志有り』
現代語に訳すると以下のような意味になります。
いかがでしょうか。
後半の続きの部分と一対になることで、この言葉の本来の姿・意味合いがハッキリと感じ取れてくると思います。
その意味で、「足るを知る」の言葉は本来は、後半部分と一対の形の言葉として知られるべき言葉であったのだと思います。
不勉強なため、それがいつ頃から前半部分のみを切り出し、別の意味合いが含まれる言葉として使われるようになったのかは分かりませんが‥ 何とはなしに、そこにはある種の意図が潜まれていたようには感じられます。
おそらく、戦前や戦時中の1945年以前のことなのでしょう。
この「足るを知る」との言葉。
先にみたように辞書では、旧来の使われ方が昔の用法のまま載っているわけですが、“生きている言葉” として「今」の時代の肌感覚としてリアルに使われている用法は、《一対》の意味合いが多くなっているのだと感じられます。
二昔・一昔前にはあまり耳にすることがなかったこの「足るを知る」という言葉を、近年はわりと目にする機会が増えてきているのには、そうした背景があるのだと思います。
当記事は、当【あ劇場©】ブログの2020年12月29日付け記事の《番外編》記事として、元記事の中で使用した「足るを知る」という言葉の《本来の姿=続きの部分を含めた姿》を案内・紹介する記事となっています。
また、その元記事の翌日となる2020年12月30日付け記事では、この《本来の姿=続きの部分を含めた姿》の意味合いと全く同じ意味合いの内容の話しが紹介された本を取り上げていました。
その本は、 こちらの本になります。
上掲の本は、2012年にブラジル・リオデジャネイロで開かれた国際会議でホセ・ムヒカ大統領がのこした伝説のスピーチを絵本化したものです。
以下の内容は、同書『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』よりの引用となります。
~前略~
さっきからわたしが、「生き方が危機におちいっている」と言っているのは、こうしたことです。いままでとはちがった文化をつくるために、たたかい始める必要があるのです。人類がほらあなに住すんでいた時代の生活にもどろう、と提案しているのではありません。時代を逆くもどりさせる道具を持とうと言っているのでもありません。
そうではなくて、いまの生き方をずるずると続つづけてはいけない、もっとよい生き方を見つけないといけないと言いたいのです。わたしたちの生き方がこのままでよいのか、考え直さないといけない。そう言いたいのです。古代の賢人エピクロスやセネカ、そしてアイマラ民族は、つぎのように言いました。
「貧乏とは、少ししか持っていないことではなく、かぎりなく多くを必要とし、もっともっととほしがることである」
【まとめとして】老子の言葉「足るを知る」と世界でいちばん貧しい大統領の「スピーチ」が共に『今』注目をされている理由
老子の言葉は「足るを知る」の本来の意味合いは以下の内容でした。
世界でいちばん貧しい大統領こと、ホセ・ムヒカ大統領の伝説的なスピーチの核心は次の内容でした。
「貧乏とは、少ししか持っていないことではなく、かぎりなく多くを必要とし、もっともっととほしがることである」
共に、現代の成長至上主義的で限りなく欲望を膨張させ続けること自体を目的としてしまった誤った資本主義社会に対する、強いアンチテーゼとなっています。
その大切な意味を見直す必要性を危機感を多くの人たちが感じるからこそ、そのメッセージが「近年」注目され必要とされてきたのだと感じます。
「今・現在」は、コロナ禍という災厄に見舞われていることによってさらに。
老子とホセ・ムヒカ元大統領。
二人の言葉は共に、人間にとって何が大切かを教えてくれています。
子供たちの未来のために、親世代こそが、「変わっていかないといけない」と感じます。